ひとりごとライナーノーツ

ルリヲの愛してやまない音楽と忘れたくない日々。

2019.12.16 MONOEYES Interstate 46 Tour 2019 Final at 豊洲PIT ライブレポート

細美武士という男が奏でる音楽に出会って、もう12年になる。この出会いを話し始めると、とても長くなってしまうので割愛するが、この12年間ずっと彼のバンドを追いかけ続けてきた。

これまでなかなか縁のなかったMONOEYESを初めて見ることができた。

 

ELLEGARDENという、かつて細美さんが「人生のすべてだった」と言ったバンドが再び動き出した2018年。昔のバンドが動き出すことによって、その他のプロジェクトを一旦止めるというミュージシャンは少なくない。

それでも細美さんは今年、ELLEGARDENで夏フェス巡業をまわり、the HIATUSでアルバムリリース/レコ発ツアーを完遂し、このMONOEYESで"Interstate 46 E.P."をリリースしレコ発ツアーをこの日完遂しようとしている。

 

「ソロアルバムを作ってみようと思う」そう言ってはじまった"A Mirage In The Sun"の制作から、MONOEYESというバンドになり5年。

何が細美さんをそこまで突き動かすのか。

 

あたしはそれを生命で感じるためにこの日豊洲PITへ向かったんだ。

 

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まだ開演まで15分ほどある。そんな時に細美さんが右手にマイク、左手に缶ビールを持ちステージへ出てきた。今回のツアーは前説をやっているらしいという話は知っている。

ライブの注意事項を話す。昨日も救急車で搬送されたお客さんがいるらしい。

「ダイブしたり、暴れて楽しみたい人。前で見たいけどゆったり見たいって言う人。どちらの自由も他の人たちがいて成り立ってるってことを考えてライブ楽しんでね。」

最後に言っていたこの言葉が印象的だった。

 

定刻。暗転するとSEであるSTARWARSのテーマ曲が流れる。

照らされるステージ後方。片目が手によって開かれ舌を出したMONOEYESのバックドロップがゆっくりと掲揚される。

演出が似ているからなんだろうが、擦り切れるほど見まくったELLEGARDENのDVD「Doggy Bags」のライブと凄く重なって見えた。

 

フロアの歓声が落ち着く。ライブの1音目が鳴らされる直前の一瞬の静寂。この時間が本当に愛おしくて大好きだ。

 

トディの美しいアルペジオが響く。

1曲目は"Leaving Without Us"

幽玄であり低体温でありながら、凄まじい疾走感と爽快感に溢れる曲。この曲を聴くと、MONOEYESが決して「ELLEGARDEN的アウトプット」としてあるバンドではないことがわかる。ELLEGARDENで同じことを表現しようとしてもこうは絶対にならない。

 

そこから間髪入れずに"Run Run"へなだれ込む。揺れるフロア。序盤でありながら会場にいる全員が既に沸点に到達してる。

 

"Like We've Never Lost"、"Free Throw"とキラーチューンが連打される。

 

そして"Get Up"だ。これまでと打って変わって皆がジャンプし、シンガロングする。

聴いた者が口ずさまずにはいられなくなるメロディ。細美武士の最大の武器である。

 

「こんばんはMONOEYESです!!」

ここで初めてのMC。

「今日はツアーファイナルだからさ、今日まで旅をしてきて見てきたもの、手に入れてきたものたくさんあるから、俺たちの最高到達点になるのは間違いんだわ。ただ、今日終われば明日休みだ〜なんて思ってる奴は1人もいない。4人ともまだやりてえな、もう1本できねえかなって、ただただ終わってしまうのが寂しいって思ってる。それがお前ら伝わるかどうかの戦いをしたいと思います。」

 

細美さんはあいっ変わらず初めてライブを見た時と同じことを言ってる。10年以上ステージに立ち続けても、まだこう思ってる。

これが芯なんだろうし、きっとこの人本当に音楽してる瞬間が楽しくてしょうがないんだろうなぁ。

そんなことを考えていたらなんか笑顔になっていた。

 

次に流れてきたのは今ツアーの主役。

"Interstate 46"

全国を旅し、この日ファイナルを迎える彼らを最大限に形容したような歌。

たとえどのくらいの歳月が経とうとも、あたしは彼らをこの日豊洲で見た事をきっと忘れないだろう。

 

「スコットが決めるぜー!」

細美さんの笑顔のシャウトの後にはじまったのは"Roxette"

細美武士がマイクを離す。

彼がこの20年間のキャリアでマイクを離さなかったのは単に歌が好きだからなんていう簡単な理由ではないだろう。

それだけ大きな物を背負って、全てを伝えるのは自分だという覚悟があったと思う。かつてのELLEGARDENのライブにはそんな殺気に近い気迫が渦巻いていた。

この瞬間に気づいた。このバンドは細美武士がなによりもすべてをメンバーに預けて共に共鳴を発信しているバンドなのだと。

どんな言葉でも形容できない、ロックバンドというひとつの塊をぶつけられた。

 

Allisterの名曲"Somewhere On Fullerton"も演奏され、"Two Little Fishes"へ。

フロアが地響きのようなシンガロングを巻き起こす。初めてこの曲を聴いた時「細美武士の変化」というものを痛烈に感じた曲。

幸福感で胸がいっぱいになる。

 

"When I Was a King"では大量のダイバーでフロントエリアが埋め尽くされる。メロディックパンクの結晶と呼ぶに相応しい純度の高い名曲である。

 

「次にやる曲は、お前らロクデナシの歌。」

そう言って演奏されたのは"Borderland"だった。

かつて細美さんはフロアのお客さんに向かって「人の作ったルールとかさ、そういうのが嫌でお前らライブハウスに逃げ込んでくるんだろ?」と言った。

あたしらはきっといつまでも、そういう生き物なんだろう。あの頃"Middle Of Nowhere"や"Alternative Plans"が、ライブハウスの外で与えられたスペースにちゃんと入れなかったあたしを支えてくれていたように、きっとこの先もあたしは"Borderland"に支えられていくんだろう。

 

さらに"Boders & Walls"へと繋がれ、"My Instant Song"へとなだれ込む。

本当になんて美しいメロディなんだろう。"グラニート"を挟み、ラスト"3, 2, 1 Go"へ。

 

1度はけたメンバー。当然のアンコール。

 

再度ステージに出てきた時、細美さんは上裸になっている。

 

"What I Left Today"から"End of the Story"へ。

疾走感と全てを包み込むような4人の笑顔。

フロアのオーディエンスも本編がなかったかのような弾け方をしてる。本当にライブハウスって素敵な場所だ。

そう思わせてくれるのはいつも細美さんのバンドだ。ダイブしていく人達が発射台の人間にありがとう!と言って飛んでいくライブなんて他じゃありえない。

フロアにこんな空気を作ったのはひとえに彼が言い続け行動し続けてきたすべての表れなんだと思う。昔ホルモンのナヲちゃんが「細美さんの言うことは絶対!」なんて冗談で言ってたけど、これ実はすごく本質をついている。

細美さんが言うんだから、俺たち私たちがやんなきゃな。って気持ちにさせられる、そんな素晴らしいミュージシャンとファン。

一緒に歩んできた道の実証がこれなんだろう。

 

2度目のアンコールに出てきたメンバー。

ここで細美さんは、

「来年アルバム作ります。次のアルバムには日本語の曲も多く入れたいと思ってます。そのアルバムができたら、久々に街のきったねえ路地裏のライブハウスをまたまわりたいと思ってるよ。

次の曲の歌詞を書いてる時に何を書いたらいいんだろうと思って、YouTubeで中学生の頃に学校まで通っていた電車の風景を見てたんだよ。

電車に乗り遅れたら1時間経たないと次の電車が来ないっていうど田舎でさ。何にもなくて、ちょっと大きくなったらバイクをいじる、車をいじる、人によっては暴走族に入る。そんなことしかなかった街。

そこに川が流れててさ、川の向こうに違う街が見えるんだよ。

川縁に座りながら、この川を超えたら向こうは知らない街なんだな。どんな場所なんだろうな。って想像してて、いつか川の向こう側に行ったらすげえ物が見えるんじゃねえかってずっと考えてた。俺はこの年になってもずっと同じことを思ってるんだよね。

大人になって高いところに住みたい。バンドが広まってでかい所でやりたい。そういうのがいい人もいるのかもしれないけど、俺はほんとに興味がなくて、もっと遠くに行きたいんだよ。

それぞれ自分の好きなスケールってあって、俺はそれが路地裏のちっちゃいライブハウスなんだ。

色んなこと言われたよ。それは逃げなんじゃねえのかとか。でも全部つっぱねて、ここまでやってきて、どれが違くても今ここでこいつらとライブやれてねえよ。

歳なんか関係ないよ。やりてえことがあるんだろ?だったらやるしかないでしょ。

ありがとうございました。MONOEYESでした。」

と言った。

 

細美武士という男がどんなことがあっても曲げずに貫いてきた道。平坦であったわけがないだろう。

でも細美さんはこう言いながら笑っていた。

これが全ての答えなんだと思う。

なによりも自分と戦い続けて、自分に勝ち続けてきた人間だからこそ言える言葉。

だからこそあたしはこの人を追いかけ続けてきたんだ。そんなことを改めて思い出した。

 

正真正銘のラストは"ボストーク"

 

グッシャグシャになりながら最高に笑顔な4人とフロアでライブは終わった。

 

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10年経っても、細美さんがあたしらに言ってることは何一つ変わってない。

「自分の生きたい生き方を、自分の力と責任で掴み取って生きてけよ。疲れたりしんどかったらまたここにこいよ。」

きっとこれだけなんだと思う。

 

変わったことが唯一あるとすれば、みんなで戦ってるはずなのに誰よりも色んなものを背負い込んで、1人で戦ってるような孤独感が見えた昔の細美さんはいなくなってた。

何より仲間を信じ、全てを預けて一緒に戦ってる。

今の細美武士はおそらく、過去最高のフロントマンだとまざまざと見せつけられた。

 

ほんといつライブ見に行っても、当たり前のことに気付かされるばかり。

どっちかがくたばるまで、ずっと追いかけたくなる男。初めて見たあの日からなんにも変わってない。

 

相変わらず大好きだよ。

 

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2019.12.16 MONOEYES

"Interstate 46 Tour 2019"

at 豊洲PIT

 

MONOEYES セットリスト

1.Leaving Without Us

2.Run Run

3.Like We've Never Lost

4.Free Throw

5.Get Up

6.Interstate 46

7.Roxette

8.Somewhere On Fullerton

9.Two Little Fishes

10.Reasons

11.When I Was A King

12.Gone

13.明日公園で

14.Borderland

15.Borders & Walls

16.My Instant Song

17.グラニート

18.3,2,1 Go


en1.What I Left Today

en2.End Of The Story

 

en3.ボストーク

 

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