ひとりごとライナーノーツ

ルリヲの愛してやまない音楽と忘れたくない日々。

2020.01.09 the HIATUS Jive Turkey vol.04 1st Show at Blue Note Tokyo

もう毎年このシリーズを見に行くことはあたしの中でルーティーンになっている。

いつもライブハウスを主戦場とするthe HIATUSがジャス箱を周り、普段とアレンジもセットリストも様変わりさせて行う、スペシャルなライブ。それがJive Turkey。

チケット代は1番安い席で6500円。普段のエイタスのライブから比べるとざっと2.5倍くらいする。1st・2ndで一日に2本やるため、アンコール含めて11~12曲ほどの少なめのセットリスト。

少し敷居が高く感じてしまう人もいると思う。しかし、ここでしか見れない凄まじく特異なthe HIATUSを見るためなら、コスパなど悪いわけがないなと行くたびに思わされる。

the HIATUSというバンドはそれほどに深い懐から様々な武器を出してくるモンスターのようなバンドなのである。

 

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開場し席に着くと、ギャルソンからメニューを渡される。

毎年Jive Turkeyでは、この日限定のオリジナルカクテルが作られる。

カクテル名の所には「考え中 (公演中に発表します)」と書かれている。

毎年細美さんが命名するオリジナルカクテル。ワイルドターキーをギネスビールで割ったものにレモンがのっている。

毎年恒例なので、こちらを注文。

公演中に発表された名前は"German Invasion"でした。

クラフトビール大好きなあたしにはもってこいなカクテルでした。

 

Blue Note Tokyoは本当にハコの雰囲気が良すぎて、開演前にお酒を飲んでいると勝手にフワフワしてきてしまう。

 

そんなことを言っていたら暗転。

 

メンバーが1人ずつ登場してはそれぞれの楽器を鳴らし、音を重ねていく。ドラム、ベース、ピアノ、ギターと重なり、細美武士登場。

本日の夜は"Regrets"からスタート。

不必要なものが極限まで取り除かれた、澄みきった素晴らしい名曲。

お酒を片手に肩を揺らしながら、音楽を楽しむお客さん達が薄暗い照明の中に見えて"Regrets"のPVのワンシーンのようだった。

 

次の曲は対極的に洪水のような重奏が奏でられる。

、、、この曲なんだ、、?

細美さんが歌い始めてやっと"Thirst"だと気づいた。

わかるわけがない。こんな多幸感のあるアレンジをされたら。

4thアルバム"Keeper Of The Flame"の幕を開ける不吉なイントロ。ループステーションによって重ねられていく何か生命体の鼓動のようなリズム。

そんな不穏感が"Thirst"の何よりの魅力だし、幾度となく聴き続けた曲のイメージがこちらとしては完全に固まっている。

ここまで書いた"Thirst"への御託をぜーんぶ水に流してしまうような多幸感と美しさに包まれた素晴らしい"Thirst"に空いた口が塞がらなかった。

逆に考えてみれば、荒い叫びに近いメロディだと思っていた"Thirst"のメロディはこんなことが出来てしまうほどに美しいものだったんだということに気付かされた。

こういう体験ができてしまうから、Jive Turkeyは本当にやめられない。

 

"Bonfire"では伊澤一葉のピアノが決まりまくる。美しいことは言うまでもないないが、本当に飛び跳ねまくるような演奏に椅子に座ってることがもどかしくなってくる。

 

笑顔で幸せそうに"Horse Riding"を歌い終わったあと、細美さんは話し始めた。

「正月に16とか17の頃、一緒に単車乗って走り回ってた昔の仲間に久々に会ったのよ。

今でも思い出すんだけど、あの頃のなんにも怖くなかった、無敵だった自分。本当に大事でずっと忘れたくねえなあって思う。

次の曲はそんな無敵だったあの頃の自分の曲。

みんなもそういう時絶対あったでしょ?その時の自分のことを思い出しながら聴いてください。」

そう言って"Clone"が演奏される。

 

無敵だった自分・・・。いつだろう?

いっつも泣いていた。いっつも寂しがってた。そんな自分ばかりが思い浮かんでくる。

あ。そうだ。それでもあたしはライブハウスにいる時間がいつだって無敵だった。

あの時間だけは、ずっとずっと何も考えることなんてなくて音楽と自分だけがそこにあった。

いまもずっとそうなんだよな。音楽と出会えたことがあたしを強くしてくれてたんだ。

そう思ったらふと涙がこぼれていた。

 

ラストはあっという間にくる。"Firefly / Life in Technicolor"がはじまる。

みんなが手拍子をしながら肩を揺らす。

細美さんは誰よりも楽しそうに踊っている。

本当に幸せな曲。

 

アンコールは"Catch You Later"

素晴らしいメロディがBlue Note Tokyoを包む。

こんなに今日の終わりと明日への光を脳裏に映し出してくれるメロディは他にない。

「ありがとうございました!良い新年を!」マサくんのよくわからない挨拶で爆笑の中、大円団に。

 

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"Firefly / Life in Technicolor"を聴いている時間。これが本当に幸せな時間だった。

エイタスが始まった頃、こんなに幸せの溢れた曲がエイタスから聴けるなんて思ってもみなかった。

10年って時間は本当に色んなことをあたし達に教えてくれたね。

10年前地獄の苦しみのようなあなたたちの歌に救われていたあたしは、今あなたたちの幸せな歌を聴きながら笑顔で手を叩いてる。

こういう時にこの言葉使うんだよね。

 

最高だよ。

 

また来年もこの場所で。

 

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2020.01.09 the HIATUS

"Jive Turkey vol.04" 1st Show

at Blue Note Tokyo

 

the HIATUS セットリスト

1.Regrets
2.Thirst
3.Geranium
4.Servant
5.Bonfire
6.Horse Riding
7.Clone
8.紺碧の夜に
9.Insomnia
10.Firefly / Life in Technicolour

en1.Catch You Later

 

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2019.12.16 MONOEYES Interstate 46 Tour 2019 Final at 豊洲PIT ライブレポート

細美武士という男が奏でる音楽に出会って、もう12年になる。この出会いを話し始めると、とても長くなってしまうので割愛するが、この12年間ずっと彼のバンドを追いかけ続けてきた。

これまでなかなか縁のなかったMONOEYESを初めて見ることができた。

 

ELLEGARDENという、かつて細美さんが「人生のすべてだった」と言ったバンドが再び動き出した2018年。昔のバンドが動き出すことによって、その他のプロジェクトを一旦止めるというミュージシャンは少なくない。

それでも細美さんは今年、ELLEGARDENで夏フェス巡業をまわり、the HIATUSでアルバムリリース/レコ発ツアーを完遂し、このMONOEYESで"Interstate 46 E.P."をリリースしレコ発ツアーをこの日完遂しようとしている。

 

「ソロアルバムを作ってみようと思う」そう言ってはじまった"A Mirage In The Sun"の制作から、MONOEYESというバンドになり5年。

何が細美さんをそこまで突き動かすのか。

 

あたしはそれを生命で感じるためにこの日豊洲PITへ向かったんだ。

 

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まだ開演まで15分ほどある。そんな時に細美さんが右手にマイク、左手に缶ビールを持ちステージへ出てきた。今回のツアーは前説をやっているらしいという話は知っている。

ライブの注意事項を話す。昨日も救急車で搬送されたお客さんがいるらしい。

「ダイブしたり、暴れて楽しみたい人。前で見たいけどゆったり見たいって言う人。どちらの自由も他の人たちがいて成り立ってるってことを考えてライブ楽しんでね。」

最後に言っていたこの言葉が印象的だった。

 

定刻。暗転するとSEであるSTARWARSのテーマ曲が流れる。

照らされるステージ後方。片目が手によって開かれ舌を出したMONOEYESのバックドロップがゆっくりと掲揚される。

演出が似ているからなんだろうが、擦り切れるほど見まくったELLEGARDENのDVD「Doggy Bags」のライブと凄く重なって見えた。

 

フロアの歓声が落ち着く。ライブの1音目が鳴らされる直前の一瞬の静寂。この時間が本当に愛おしくて大好きだ。

 

トディの美しいアルペジオが響く。

1曲目は"Leaving Without Us"

幽玄であり低体温でありながら、凄まじい疾走感と爽快感に溢れる曲。この曲を聴くと、MONOEYESが決して「ELLEGARDEN的アウトプット」としてあるバンドではないことがわかる。ELLEGARDENで同じことを表現しようとしてもこうは絶対にならない。

 

そこから間髪入れずに"Run Run"へなだれ込む。揺れるフロア。序盤でありながら会場にいる全員が既に沸点に到達してる。

 

"Like We've Never Lost"、"Free Throw"とキラーチューンが連打される。

 

そして"Get Up"だ。これまでと打って変わって皆がジャンプし、シンガロングする。

聴いた者が口ずさまずにはいられなくなるメロディ。細美武士の最大の武器である。

 

「こんばんはMONOEYESです!!」

ここで初めてのMC。

「今日はツアーファイナルだからさ、今日まで旅をしてきて見てきたもの、手に入れてきたものたくさんあるから、俺たちの最高到達点になるのは間違いんだわ。ただ、今日終われば明日休みだ〜なんて思ってる奴は1人もいない。4人ともまだやりてえな、もう1本できねえかなって、ただただ終わってしまうのが寂しいって思ってる。それがお前ら伝わるかどうかの戦いをしたいと思います。」

 

細美さんはあいっ変わらず初めてライブを見た時と同じことを言ってる。10年以上ステージに立ち続けても、まだこう思ってる。

これが芯なんだろうし、きっとこの人本当に音楽してる瞬間が楽しくてしょうがないんだろうなぁ。

そんなことを考えていたらなんか笑顔になっていた。

 

次に流れてきたのは今ツアーの主役。

"Interstate 46"

全国を旅し、この日ファイナルを迎える彼らを最大限に形容したような歌。

たとえどのくらいの歳月が経とうとも、あたしは彼らをこの日豊洲で見た事をきっと忘れないだろう。

 

「スコットが決めるぜー!」

細美さんの笑顔のシャウトの後にはじまったのは"Roxette"

細美武士がマイクを離す。

彼がこの20年間のキャリアでマイクを離さなかったのは単に歌が好きだからなんていう簡単な理由ではないだろう。

それだけ大きな物を背負って、全てを伝えるのは自分だという覚悟があったと思う。かつてのELLEGARDENのライブにはそんな殺気に近い気迫が渦巻いていた。

この瞬間に気づいた。このバンドは細美武士がなによりもすべてをメンバーに預けて共に共鳴を発信しているバンドなのだと。

どんな言葉でも形容できない、ロックバンドというひとつの塊をぶつけられた。

 

Allisterの名曲"Somewhere On Fullerton"も演奏され、"Two Little Fishes"へ。

フロアが地響きのようなシンガロングを巻き起こす。初めてこの曲を聴いた時「細美武士の変化」というものを痛烈に感じた曲。

幸福感で胸がいっぱいになる。

 

"When I Was a King"では大量のダイバーでフロントエリアが埋め尽くされる。メロディックパンクの結晶と呼ぶに相応しい純度の高い名曲である。

 

「次にやる曲は、お前らロクデナシの歌。」

そう言って演奏されたのは"Borderland"だった。

かつて細美さんはフロアのお客さんに向かって「人の作ったルールとかさ、そういうのが嫌でお前らライブハウスに逃げ込んでくるんだろ?」と言った。

あたしらはきっといつまでも、そういう生き物なんだろう。あの頃"Middle Of Nowhere"や"Alternative Plans"が、ライブハウスの外で与えられたスペースにちゃんと入れなかったあたしを支えてくれていたように、きっとこの先もあたしは"Borderland"に支えられていくんだろう。

 

さらに"Boders & Walls"へと繋がれ、"My Instant Song"へとなだれ込む。

本当になんて美しいメロディなんだろう。"グラニート"を挟み、ラスト"3, 2, 1 Go"へ。

 

1度はけたメンバー。当然のアンコール。

 

再度ステージに出てきた時、細美さんは上裸になっている。

 

"What I Left Today"から"End of the Story"へ。

疾走感と全てを包み込むような4人の笑顔。

フロアのオーディエンスも本編がなかったかのような弾け方をしてる。本当にライブハウスって素敵な場所だ。

そう思わせてくれるのはいつも細美さんのバンドだ。ダイブしていく人達が発射台の人間にありがとう!と言って飛んでいくライブなんて他じゃありえない。

フロアにこんな空気を作ったのはひとえに彼が言い続け行動し続けてきたすべての表れなんだと思う。昔ホルモンのナヲちゃんが「細美さんの言うことは絶対!」なんて冗談で言ってたけど、これ実はすごく本質をついている。

細美さんが言うんだから、俺たち私たちがやんなきゃな。って気持ちにさせられる、そんな素晴らしいミュージシャンとファン。

一緒に歩んできた道の実証がこれなんだろう。

 

2度目のアンコールに出てきたメンバー。

ここで細美さんは、

「来年アルバム作ります。次のアルバムには日本語の曲も多く入れたいと思ってます。そのアルバムができたら、久々に街のきったねえ路地裏のライブハウスをまたまわりたいと思ってるよ。

次の曲の歌詞を書いてる時に何を書いたらいいんだろうと思って、YouTubeで中学生の頃に学校まで通っていた電車の風景を見てたんだよ。

電車に乗り遅れたら1時間経たないと次の電車が来ないっていうど田舎でさ。何にもなくて、ちょっと大きくなったらバイクをいじる、車をいじる、人によっては暴走族に入る。そんなことしかなかった街。

そこに川が流れててさ、川の向こうに違う街が見えるんだよ。

川縁に座りながら、この川を超えたら向こうは知らない街なんだな。どんな場所なんだろうな。って想像してて、いつか川の向こう側に行ったらすげえ物が見えるんじゃねえかってずっと考えてた。俺はこの年になってもずっと同じことを思ってるんだよね。

大人になって高いところに住みたい。バンドが広まってでかい所でやりたい。そういうのがいい人もいるのかもしれないけど、俺はほんとに興味がなくて、もっと遠くに行きたいんだよ。

それぞれ自分の好きなスケールってあって、俺はそれが路地裏のちっちゃいライブハウスなんだ。

色んなこと言われたよ。それは逃げなんじゃねえのかとか。でも全部つっぱねて、ここまでやってきて、どれが違くても今ここでこいつらとライブやれてねえよ。

歳なんか関係ないよ。やりてえことがあるんだろ?だったらやるしかないでしょ。

ありがとうございました。MONOEYESでした。」

と言った。

 

細美武士という男がどんなことがあっても曲げずに貫いてきた道。平坦であったわけがないだろう。

でも細美さんはこう言いながら笑っていた。

これが全ての答えなんだと思う。

なによりも自分と戦い続けて、自分に勝ち続けてきた人間だからこそ言える言葉。

だからこそあたしはこの人を追いかけ続けてきたんだ。そんなことを改めて思い出した。

 

正真正銘のラストは"ボストーク"

 

グッシャグシャになりながら最高に笑顔な4人とフロアでライブは終わった。

 

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10年経っても、細美さんがあたしらに言ってることは何一つ変わってない。

「自分の生きたい生き方を、自分の力と責任で掴み取って生きてけよ。疲れたりしんどかったらまたここにこいよ。」

きっとこれだけなんだと思う。

 

変わったことが唯一あるとすれば、みんなで戦ってるはずなのに誰よりも色んなものを背負い込んで、1人で戦ってるような孤独感が見えた昔の細美さんはいなくなってた。

何より仲間を信じ、全てを預けて一緒に戦ってる。

今の細美武士はおそらく、過去最高のフロントマンだとまざまざと見せつけられた。

 

ほんといつライブ見に行っても、当たり前のことに気付かされるばかり。

どっちかがくたばるまで、ずっと追いかけたくなる男。初めて見たあの日からなんにも変わってない。

 

相変わらず大好きだよ。

 

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2019.12.16 MONOEYES

"Interstate 46 Tour 2019"

at 豊洲PIT

 

MONOEYES セットリスト

1.Leaving Without Us

2.Run Run

3.Like We've Never Lost

4.Free Throw

5.Get Up

6.Interstate 46

7.Roxette

8.Somewhere On Fullerton

9.Two Little Fishes

10.Reasons

11.When I Was A King

12.Gone

13.明日公園で

14.Borderland

15.Borders & Walls

16.My Instant Song

17.グラニート

18.3,2,1 Go


en1.What I Left Today

en2.End Of The Story

 

en3.ボストーク

 

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2019.11.26 音楽と人 LIVE 2019 at 豊洲PIT ライブレポート

あたしはライブハウスで行われる、ツアーやレコ発の関係ない、こういう対バンイベントに足繁く通ってきた。

全バンドが主役。どれかのバンドに皆が花を持たせるような構図もない。ライブバンド達はこうなった時、全力で勝ちに行く勝負をする。

 

なんの世界だろうと、現場に立っている人間の真価は平場でどれだけの仕事をできるかで決まる。

情報が解禁され、あたしが真っ先にチケットを確保した理由がこれだ。

この3バンドが三つ巴のがっぷりよつで組み合った時、見たこともないエネルギーが炸裂する。そんな予感しかしなかった。

 

日本のロックシーンを戦い抜いてきた20年戦士の3バンド。他でもなくライブハウスで己を磨いてきた正真正銘のライブバンド。考えただけで心臓が早鐘を打つ、そんな豊洲までの移動時間だった。

 

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THE BACK HORN

 

SEが止まり、一瞬の静寂の中に鳴らされた1曲目は"ブラックホールバースデイ"。1曲目の1音目でオーディエンスを胸ぐらをつかみに来てることがわかった。全身の鳥肌が立つ、素晴らしい幕開け。

暗転する直前、スカスカだなあと思っていた会場は曲を追うごとに人が増え、温度も上がっていく。

 

将司(vo)はMCで、「昔インタビューを受けても全く喋れなかった自分が、コミュニケーションを取れるようになったのは音楽と人のおかけです。」と本日の主催である音楽雑誌「音楽と人」チームの方々へ感謝の念を話していた。

 

後半に演奏された"コバルトブルー"。幾度となくTHE BACK HORNのライブで聴いてきたのに未だに新鮮な爽快感に襲われる。

ラストは"刃"。

"コバルトブルー"~"刃"の流れは、覚悟を決めた者にしか得られない感覚とその潔さを叩きつけられてる気分だった。

20年以上バンドを続けてきた彼らだからこそ、余計にその意味は重くストレートにオーディエンスに届くだろう。

 

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BRAHMAN

 

「孤高」という言葉がこれほど似合うバンドはいない。BRAHMANのライブを見るといつもそう思わされる。彼らは決して孤独ではない。仲間を大切にし、こうやって、途方もない数の対バンライブを毎年行っているバンドだ。

それでも彼らのライブは他を寄せ付けない圧倒的なパワーがある。百獣の王ライオンが吠える時、近寄る動物がいないように。

 

1曲目は透き通ったギターリフで始まる"A White Deep Morning"。浮遊感のあるメロディ、「静と動」を完全に支配下に置く演奏に、あっという間にステージに五感が吸い込まれた。

 

MCどころかチューニングすら直さず、間髪入れずに曲が連打されていく。40歳を過ぎても毎度この無尽蔵のスタミナでライブをし続けるBRAHMANには本当に頭が上がらない。

 

"不倶戴天"の間奏で「ライブハウスなんだから好きなように楽しめ!」と叫ぶTOSHI-LOW

途中、"From My Window"から"Lose All"というアルバム「THE MIDDLE WAY」が一番好きなあたし得の選曲もあり、"覚醒"でフロアにTOSHI-LOWが飛び込む。

TOSHI-LOW目掛けて飛んでくるダイバー達。途中でマイクが鳴らなくなるアクシデントもありながら、ダイバー達を跳ね除けて"鼎の問"へ。

 

銀杏BOYZ、、、THE BACK HORN、、、嫌い!田舎モンだから。MCが訛ってるから。」なんて冗談を言うTOSHI-LOW

そこからTOSHI-LOW節全開で、音楽と人について、リハでTHE BACK HORN銀杏BOYZを見ていて思ったこと、8年前銀杏BOYZの峯田くんと喧嘩したことなんかを話しながら、ステージに三線を持ったOrange RangeのYOHを呼び込む。

 

始まったのは"満月の夕"。歌が始まるとTHE BACK HORNの将司と銀杏BOYZの峯田くんが出てきてそれぞれTOSHI-LOWと肩を組み、抱擁を交わしながら3人で歌う。

かつてTOSHI-LOWと峯田くんが喧嘩したことは我々も知っているくらい有名な話で、この界隈のファンは誰もがピリッとする危ういふたり。そのふたりが抱き合い、一緒に歌う。

彼らが伝えたかったことなんて、ひとつかしかないだろうし、そんなことはここに書くまでもない。

あたしは涙が止まらなかった。

 

フジロックの時、峯田が言った通りだ!ハッパやったっていい。生き延びろって。闇営業したっていい。生き延びろって。そうすればまた会えるって。そういう失敗もやり直して、また出会えるって歌!」

TOSHI-LOWが天高くそう叫んでラストの"真善美"が演奏された。

 

2011年の震災以降、変化があったBRAHMANのライブが、この近年でまた徐々に変わってきてるなあと思った。

ライブ中、あんなに笑顔なTOSHI-LOW初めて見た。あたしにはとてつもなく眩しくて、そんなBRAHMANすごい好きだ。

当たり前だけど笑顔に適うことなんて存在しないもの。

 

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銀杏BOYZ

 

いよいよ最後のバンド。暗転と共にオーディエンスが「峯田!!」と叫びまくる。

SEはなく、無音の闇の中峯田くんがステージにでてきた。ピンスポットがセンターを照らす。

 

銀杏BOYZ、歌います。」

 

峯田くんひとりで始まった1曲目は"生きたい"

"人間"、"光"に続く「光と影の三部作」の完結編であるこの曲。初めてライブを目撃する銀杏BOYZの1曲目。あたしは10年ほど前の記憶がフラッシュバックしてきた。

 

あたしは青春時代を「GOING STEADY」ではなく「銀杏BOYZ」に救われた人間である。

捻くれ者で、自己中心的な欲にまみれていたあたしに、澄みきった青春を鳴らすGOING STEADYは明るすぎたように感じた。

でも銀杏BOYZはそんなあたしを肯定してくれた。時々こんな最低な人間は自分だけじゃないのか。と自己否定に苛まれるあたしを、「お前だけじゃないよ。ここにもいるよ。」と言ってくれている気がした。

 

願いと希望。贖罪と絶望。峯田くんが歌うひとつひとつの言葉が痛いほど身体に伝わってくる。それはロックバンドのライブというものだけで包括できないほどスケールの大きいものだった。

 

"東京少年"を挟み、"駆け抜けて性春"へ。

 

自意識と届かない恋心に溺れ続けた、あの日のあたしをいつも救ってくれた曲。

「星降る青い夜さ。

どうか どうか声を聞かせて

この街をとびだそうか

つよく つよく抱きしめたい」

峯田くんはそう歌ったあと、YUKIちゃんのパートが始まる瞬間に客席にマイクを向けた。

「わたしはまぼろしなの

あなたの夢の中にいるの

触れれば消えてしまうの

それでもわたしを

抱きしめて欲しいの

つよく つよく」

叫びながらあたしは泣いていた。

パンクロックの強さを改めて感じる瞬間。

 

最初のMCで峯田くんは、本人目の前にしたら絶対言いたくないけど、自分がバンドを始めた頃からライブも何度も見に行ったBRAHMANと、こうしてライブハウスで一緒にやれてることを、光栄だ。と語った。

 

"骨"、"夢で逢えたら"と繋がれたセットリスト。

 

「俺は俺を見に来てる誰のことも否定しない。全員肯定する。綺麗事かもしんねえけど、銀杏BOYZを見に来たお客さんには全員笑顔で帰って欲しいんだ。」そう話す峯田くん。

 

BRAHMANの不倶戴天もそうだった。

結局あたしがパンクロックから教わったことは「赦す」ということであり、「肯定する」ということだった。

だれにも肯定してもらえなかった自分を肯定してくれた音楽。

パンクロックに昨日を救われたあたし達は、明日の誰かを肯定する人間でありたい。改めてそう思わされる1日。

 

峯田くんがアコギに持ち替えると"BABY BABY"がはじまる。GOING STEADY、第1期銀杏BOYZから現在に至るまで峯田くんが20年歌い続けた曲。

この曲はあたし達にいつまでも美しくも儚い恋心を教えてくれる。

そしてラストの"SEXTEEN"で本編が終了。

 

アンコールに出てきた峯田くんは「生きてたら絶対また会えるし、俺は生きてるあんたらにまた『I want youだぜ。I need youだぜ。』って言いたいんだよ!」と叫び、正真正銘のラスト"ぽあだむ"がはじまる。

五臓六腑を掴まれているような重たい1曲目の"生きたい"が、嘘のような垢抜けたポップソング。

峯田くんという人間がきっと暗さだけでも明るさだけでもない人間だからなんだろう。

いつだって自然体を音楽にのせてきた彼だからこそ作れるライブ。

 

ありがとう銀杏BOYZ。また明日から必死に生き延びて、必ずライブハウスに帰ってくるよ。

 

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2019.11.26 音楽と人 LIVE 2019

豊洲ナイトカーニバル〜

銀杏BOYZ × BRAHMAN × THE BACK HORN

at 豊洲PIT

 

THE BACK HORN セットリスト

1.ブラックホールバースデイ
2.シンフォニア
3.罠
4.心臓が止まるまでは
5.悪人
6.太陽の花
7.コバルトブルー
8.刃

 

BRAHMAN セットリスト

1.A White Deep Morning
2.初期衝動
3.雷同
4.After-Sensation
5.Deep
6.Beyond The Mountain
7.不倶戴天
8.From My Window
9.Lose All
10.警醒
11.鼎の問
12.満月の夕 w/ YOH,山田将司,峯田和伸
13.真善美

 

銀杏BOYZ セットリスト

1.生きたい
2.東京少年
3.駆け抜けて性春
4.骨
5.夢で逢えたら
6.BABY BABY
7.SEXTEEN

en1.ぽあだむ

 

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KenKenとDragon Ashについて。

なんか最初のブログのテーマがこれってすごい寂しいです。でも、KenkenとDragon Ashはあたしの人生にとって、本当に大切な存在なので書こうと思います。

 

Kenken (RIZE / Dragon Ash)とJesse (RIZE / The Bonez)が大麻所持で逮捕されたのは7月19日。Dragon Ashは夏フェス巡業・ツアーが決まっている中でのKenkenの逮捕。

 

頭にくるのが当然の感情だと思う。

「懸命」という言葉があるけど、文字通り命を懸けて作ってきたものを、待ってる人達がいる。その場所をぶち壊されたんだ。

 

薬物なんてつまんないことで。自分勝手なことだけで。

 

KenKenの判決が出て、佐藤タイジのライブへの出演が発表された。動揺したあたし達ファン。恐らく怒りに近い感情をSNSに載せたサクちゃんとBOTS。

 

誰もがスッキリしなかった。

 

そうして昨日、KenKenのサポート終了の報告。

 

KenKenは通すべき人達に、色んなものを通せなかった。

そうとしか受け取れなかった発表。

 

だけどさ。

Dragon Ashのみんな、本当にこれでいいのかな?

 

育ちゃんがいなくなって、足が止まりそうだったDragon Ashというチームを、抱き抱えて前にもう一歩進ませてくれたのはKenKenじゃなかったのかな。

 

差し出された手を握ることは

惨めな弱さではなく

もう片方の手で守る人の

尊い強さになる

 

あたしにとって一番大切なDragon Ashの曲、"Lily"にはこんな一節がある。

育ちゃん亡き後、育ちゃん最後のレコーディング曲"Run to the Sun / Walk with Dreams"、kjがベースをレコーディングした"Here I Am"に続いてリリースされた、KenKenが初めてレコーディングに参加した曲がこの"Lily"という曲。

 

この一節が単にKenKenのことだけを指してるわけではないとは思う。だけど、KenKenも手を差し出してくれた1人だと思うんだよ。

 

だらしねえ。みっともねえ。みんなに迷惑かけやがって。。。

そう思う気持ちはわかる。

 

筋もロクに通せねえのか?

きっとそんな風にみんな思ったのかな。

 

だけど、今その手を誰よりも必要としてるのはKenKenじゃないのかな。

ボロボロの彼を抱きしめられるのはあなた達、仲間だけなんじゃないのかな。

 

Dragon Ashは本当に仲間を大切にするバンドだと思う。

日本のミクスチャーロックシーンに脈々と流れる、仲間をフックアップして、一緒に同じ景色を見ようとする、素晴らしいアティチュードはDragon Ash以外に作りえなかった。

 

だからこそ、一番大変な時にKenKenはDragon Ashに手を差し出したんだと思う。

 

許してやれなんて言わないよ。

だけどDragon Ashのみんな。

どうか、精一杯KenKenを抱きしめてあげて。

 

許された昨日を誰か許す今日に変えて欲しい。

 

あたしはあなた達のそのメッセージ。

あれから10年近く経ったけど、今でも胸に刻んで生きてる。

 

ただのいちDragon Ashファンとして、最後に一言だけ何も考えずに主観だけを断言させてください。

 

KenKenはDragon Ashに絶対必要なベーシストです。

はじめます。

これを読んでいただいてる皆様、はじめまして。

ルリヲといいます。

 

これまで何十回とブログを作り、何個か記事を書いては、更新が滞り、気づけば存在すら忘れてしまう。

そんな感じなのですが、なんとか積み重ねていけるように頑張りたいと思います。

 

ツイッターの140文字じゃ書ききれない、大好きなものたちのお話ができたらと考えてます。

 

最初から息巻くといつもと変わらなくなってしまうと思うので、月に最低1本は書いていくことを目標にしようと思います。

 

最近ライナーノーツって減りましたよね。

あたしが音楽を聴き始めた頃は、まだ歌詞カードと一緒に挟まってたあの小さな紙。

何故かわからないけど、はじめてCDを手に取った時から、ライナーノーツを読むのが好きだったんです。

CDを聴いたあと、ライナーノーツを読んで、もう一度CDを聴く。頭に広がるイメージが1回目とはまた違うものになる。

言葉の力ってなめちゃいけないんだなと思わされた体験でした。

 

音楽も映像も、サブスクリプション全盛の時代になり、カルチャーとの出会いと発見の機会が無数に開かれている現在。

これを読んでくださってるあなたが、素敵な何かと出会っていただけるキッカケになるような、、、そんな願いも込めて。

ひとりごとですが、一生懸命書いていこうと思います。

 

皆様何卒よろしゅうお願い申し上げます。